コラム

遊びで育てる感情コントロール—家庭・教室での実践法、年齢別アレンジ、効果の見取り方

感情コントロールはなぜ「遊び」を通じて身につきやすいのか?

感情コントロール(感情調整)は、感じた情動を抑え込むことではなく、状況や価値に照らして「うまく扱う」総合的な能力です。

具体的には、注意の向け方を切り替える、考え方を再解釈する(リフレーミング)、行動衝動を一拍置いて選び直す、身体反応を落ち着かせる、といった複数のプロセスから成ります。

この複雑なスキルが「遊び」を通じて身につきやすいのは、遊びが学習の土台となる動機づけ・安全性・反復性・社会的フィードバックの条件を同時に満たす、きわめて学習効率の高い活動だからです。

以下に、その理由と根拠を整理します。

心理的安全性が高く、前頭前野が働きやすい
感情コントロールには前頭前野によるトップダウンの調整が関わりますが、脅威が高いと扁桃体が優位になり学習効率が落ちます。

遊びは失敗のコストが低い「擬似環境」を作り、警戒より好奇心を喚起します。

社会的に安全な相互作用は迷走神経腹側系を介して生理的な鎮静を促す(ポリヴェーガル理論)とされ、これが「落ち着いて考える」状態を支えます。

安全なコンテクスト下では、感情に名前をつける、別解を試す、といった練習が抵抗なく進みます。

内発的動機づけが高く、反復練習が自然に起こる
遊びは「やらされる」ものではなく「やりたい」ものです。

自己決定理論が示すように、自律性・有能感・関係性が満たされる活動は粘り強さと深い学習に結びつきます。

感情調整はスキルなので反復で強化されますが、遊びは疲れにくく、バリエーション豊かな反復(状況や相手が毎回少し違う)が起こるため汎化が進みます。

模擬性と可逆性により「安全な曝露」と「撤退」ができる
ごっこ遊びやロールプレイ、鬼ごっこや取っ組み合いのような「荒っぽい遊び」は、興奮・怖さ・悔しさなどの高 arousal 情動を安全に体験させます。

これは実生活の危険を伴わない「段階的曝露」に近く、情動の沸点を観察し、上がり切る前にブレーキをかける技(間を置く、呼吸を整える、言葉で合図する)を試す場になります。

うまくいかなければすぐやめる・やり直す可逆性があるため、学習コストが低いのです。

ルールと即時フィードバックが衝動抑制と切り替えを鍛える
「止まれ・動け」「今は待つ」「順番を守る」など、遊びは小さなルールの集合です。

ルール違反はすぐに仲間や結果が教えてくれるため、抑制・ワーキングメモリ・認知的柔軟性(実行機能)が鍛えられます。

実行機能は感情調整の土台なので、遊びを通じたルール実践が感情コントロールの一般力に波及します。

共同注意・ミラーリングによる共調とコレギュレーション
遊びは他者と視線や合図を合わせ、表情・声色・動きを模倣し合う活動です。

この「共調」は情動の鏡写しを通じて他者の状態を感じ取り、強すぎる興奮を互いに調整する(コレギュレーション)機会を生みます。

子ども—大人間では足場がけ(スキャフォルディング)が効き、未発達な調整を優しく補助してくれます。

物語化と再解釈が自然に起こる
ごっこ遊びでは役割やストーリーを付与し、同じ状況を「ヒーローの試練」「笑い話」として意味づけし直せます。

これは認知的再評価(リフレーミング)の反復練習そのもので、傷つきやすい解釈(例 拒絶された)から能動的な解釈(例 試合だから強く当たっただけ)への切り替えを促します。

言語化(ラベリング)で情動の強度が下がる
遊びの中で感情に名前をつける、表情カードやジェスチャーで当てっこする等は、感情ラベリングの練習です。

ラベリングは扁桃体反応を弱め、前頭前野の関与を高めることが示されています。

「いまドキドキ」「ちょっとムッとした」を言語で扱う癖が、暴発の予防になります.
身体感覚を通じた自己調整の体験
走る・止まる・転がる・呼吸を合わせるなど、遊びは身体のリズムを直接いじります。

心拍・呼吸・筋緊張といった内受容感覚に気づき、意図的に落ち着かせる(深呼吸、力を抜く)具体的スキルを体感的に学べます。

身体ベースの調整は言葉より早く効くため、いざという時の第一選択になりやすいのです。

ポジティブ感情が「広げて築く」
楽しい・おかしいというポジティブ情動は、思考—行動レパートリーを広げ、対処資源を積み上げるとされます。

笑いと好奇心があると、視野が広がり、別案に気づき、他者に助けを求める柔軟さが生まれます。

これは怒りや不安のループを断ち切る力になります。

フローと最適覚醒の練習
遊びは挑戦と技能の釣り合いが取れやすく、過覚醒—低覚醒の中庸(最適帯)を行き来する体験を提供します。

「このくらいがちょうどいい」という覚醒水準の自己調整感覚は、競技・対人・学業など実場面に汎化します。

根拠(研究・理論のハイライト)
– 感情調整のプロセスモデル Gross(1998, 2015)。

注意配分、認知的再評価、反応抑制など複数経路で学べることを示す。

– 実行機能と遊び ダイヤモンド(2013, Annual Review)。

停止・切替・ワーキングメモリが自律的行動や感情調整の基盤であることを総説。

就学前のルール遊びやごっこ遊びがEFを伸ばす介入(Tools of the Mind; Diamond et al., 2007)や、幼児向けのゲーム的介入(例 Head-Toes-Knees-Shoulders)で自己制御が改善する研究(Tominey & McClelland, 2011)などが報告。

– ラベリング効果 Lieberman et al.(2007, Psychological Science)。

感情語でのラベリングが扁桃体反応を低減し、前頭前野活動を増すことを示す。

– ポジティブ感情の広げて築く理論 Fredrickson(2001)。

遊びが喚起するポジティブ情動が対処資源の蓄積に寄与。

– 内発的動機づけ Deci & Ryan(2000, 自己決定理論)。

遊びが自律性・有能感・関係性を満たし、粘り強い学習を促す。

– 社会的安全と生理調整 Porges(2007, ポリヴェーガル理論)。

安全な対人環境が生理的落ち着きをもたらし、調整を容易にするという枠組み。

安全な接触が脅威反応を下げる社会的緩衝の実証も多数(例 Coan et al., 2006)。

– 比較・動物研究 Panksepp(2007)、Siviy & Panksepp(2011)。

ラットのラフアンドタンブル・プレイが前頭前野系の成熟やストレス耐性に関与し、遊び剥奪は社会性・情動調整に負の影響を与えることを示唆。

Burghardt(2005)も遊びの適応的機能を総説。

– 教育・SELプログラム 学校ベースの社会情動的学習(SEL)は、ゲームやロールプレイ、協働活動を中核に据え、感情認識・自己管理・対人スキルを伸ばす。

Durlak et al.(2011, Child Development)やTaylor et al.(2017)のメタ分析で、感情調整・行動・学業の有意な改善が示される。

– 認知再評価の実践 ロールプレイ・物語化を用いた介入(CBT系、Coping Cat 等)では、ゲーム的要素が曝露と再評価の実行を促進し、恐怖・不安の調整に効果。

学習科学の観点からの補足
– 即時フィードバックは誤りの最小化と迅速な微調整を可能にします。

– 多様な文脈での反復(相手や場を変えつつ同じスキルを使う)は汎化を促します。

– 望ましい困難(適度な難しさ)は保持を高めます。

遊びは難易度調整が柔軟で、個の発達段階に適合させやすい。

– 物語・メタファー・身体化は記憶の符号化を強め、想起を容易にします。

限界と注意点
– 遊びが過度に競争的・排他的になると、不安や攻撃性を高め逆効果になり得ます。

安全・自発・包摂の原則が必要です。

– ごっこ遊びが感情理解や実行機能に「直接的」因果効果を持つかは領域によって混合証拠もあります(効果は質と設計に依存)。

目的に合わせたデザインとファシリテーションが鍵です。

– 文化や個人差(感覚過敏、気質)に配慮し、刺激量やルールを調整する必要があります。

まとめ
感情コントロールは、一度の教示で身につく知識ではなく、状況に応じて動員される一連のスキル群です。

遊びは、心理的に安全で自発的、反復可能で、即時の社会的フィードバックが得られる学習の理想条件を満たし、加えて身体・物語・関係性を通じて脳と心身の複数システムを同時に鍛えます。

実行機能、ラベリング、再評価、曝露—鎮静、共同調整といった感情調整の主要経路を、楽しく、負荷を抑えながら、しかも日常に近い変動性の中で練習できること。

これが、感情コントロールが「遊び」を通じて身につきやすい科学的な理由です。

参考となる主要文献(抜粋)
– Gross, J. J. (1998, 2015). Emotion regulation Conceptual and process models.
– Diamond, A. (2013). Executive functions. Annual Review of Psychology.
– Diamond, A., Barnett, W. S., Thomas, J., & Munro, S. (2007). Preschool program improves cognitive control. Science.
– Tominey, S. L., & McClelland, M. M. (2011). Red Light, Purple Light! Improving classroom self-regulation. Early Education and Development.
– Lieberman, M. D., et al. (2007). Putting feelings into words. Psychological Science.
– Fredrickson, B. L. (2001). The broaden-and-build theory of positive emotions.
– Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2000). Self-determination theory.
– Porges, S. W. (2007). The polyvagal perspective. Biological Psychology.
– Panksepp, J. (2007). Neuroevolutionary sources of playfulness. American Journal of Play; Siviy & Panksepp (2011) review.
– Burghardt, G. M. (2005). The Genesis of Animal Play.
– Durlak, J. A., et al. (2011). The impact of enhancing students’ SEL. Child Development.
– Taylor, R. D., et al. (2017). Promoting positive youth development through SEL. Child Development.

どんな遊びが自己認識や自己調整を効果的に鍛えるのか?

はじめに
自己認識(自分の内側の状態に気づき、言語化できる力)と自己調整(注意・行動・感情・生理反応を意図に沿って整える力)は、感情コントロールの中核です。

これらは、遊びの中で「楽しく繰り返す・安全に失敗できる・感情が動く状況で練習する」という条件が満たされると、より定着しやすくなります。

以下では、目的別に有効な遊びと、科学的な根拠・応用ポイントをまとめます。

1) 気づく力(自己認識)を育てる遊び
– フィーリング・シャレード(感情ジェスチャー当て)
遊び方 怒り・不安・喜び・退屈などのカードを引き、言葉を使わずに表現。

他の人が当てる。

正解後に「体のどこで感じた?
心拍・呼吸は?」を一言ずつ共有。

ねらい 顔表情・姿勢・内受容感覚(interoception)の結びつきを学ぶ。

感情ラベル付けの習慣化。

根拠 感情のラベリングは扁桃体の反応を下げ、前頭前野の調整を助ける(Lieberman et al., 2007)。

教室向けSELのRULERプログラム(Brackettら)は「ムードメーター」で感情語彙と気づきを高め、行動面の改善を示す。

ムードメーター/感情温度計ゲーム
遊び方 色マップや0–10の温度計に今の気分を置く→数分の活動後に再評価。

ペアで「何が変わった?」を短く共有。

ねらい 状態識別・強度の弁別・変化のトラッキング。

根拠 情緒認識の向上は自己調整の前提であり、RULERやPATHSなどのSELメタ分析で学業・行動に中程度の効果(Durlak et al., 2011; Taylor et al., 2017)。

からだの探偵(内受容スキャン)
遊び方 1分間の静止→「心拍・呼吸・肩の力・胃」などに気づいたことをカードで選ぶ。

次に簡単な伸びや呼吸後に再チェック。

ねらい 内受容と情動のリンクを自覚。

反応の早期検知。

根拠 内受容の鋭敏化は情動調整と関連(Fustos et al., 2013)。

マインドフルネス介入は感情調整の改善を示す(Keng et al., 2011; 青年対象の系統レビューでも小〜中効果、Zoogman et al., 2015)。

2) 落ち着かせる力(生理調整・鎮静)を鍛える遊び
– 波乗り呼吸・箱呼吸チャレンジ
遊び方 4拍吸う-4拍止める-4拍吐く-4拍止める。

砂時計やアプリの波に合わせ、1分→2分→3分と段階的に。

ねらい 迷走神経トーンの向上、心拍の整いを体感。

根拠 ペース呼吸とHRVバイオフィードバックは不安・感情調整に有効(Lehrer & Gevirtz, 2014; Goessl et al., 2017)。

5-4-3-2-1 グラウンド・ハント
遊び方 見える5つ、触れる4つ、聞こえる3つ、嗅ぐ2つ、味わう1つを探す競争。

ねらい 注意の外界シフトで過覚醒からの離脱。

根拠 グラウンディングはディストレス耐性を高めるDBTスキルの一部(Linehan)。

臨床研究で情動暴走の低減に寄与(Mehlum et al., 2016)。

同期リズム遊び(手拍子・簡単な太鼓セッション)
ねらい 同期は安全感と自律神経の安定化を促進。

社会的調整の基盤。

根拠 リズム同期は協力性や自己調整の促進に関連(Kirschner & Tomasello, 2010)。

3) 衝動抑制・注意転換(実行機能)を鍛える遊び
– だるまさんが転んだ/赤信号・青信号/シモン・セズ
ねらい Go/No-Go、停止信号、ワーキングメモリの練習。

高覚醒時に止まる力。

根拠 幼児〜児童の実行機能ゲームは自己調整と学業に波及(Diamond & Lee, 2011; Zelazo & Carlson, 2012)。

転移は課題類似性が高いほど生じやすい。

カラーストループ/逆さ言葉
遊び方 色名とインク色が食い違うカードを正確に読む。

難易度を毎週上げる。

根拠 抑制と認知柔軟性の強化に有効。

ただし遠位転移は小さめ(Melby-Lervåg & Hulme, 2013)。

ターン制・協力ボードゲーム(Jenga, Dobble, 協力型ゲーム)
ねらい 待つ、計画、視点取得、失敗耐性。

根拠 協力遊びは社会的自己調整を促進。

SELプログラム全体で問題行動の減少(Durlak et al., 2011)。

4) 認知の柔軟性・再評価(リフレーミング)を遊びで
– 物語の別エンディング作り
遊び方 同じ出来事に3通りの解釈を付けてみる。

コミカル、事実重視、希望的。

ねらい 自動思考から距離をとり、再評価のレパートリーを増やす。

根拠 認知的再評価は情動反応を下げる(Gross, 2015)。

ストレス再評価で成績・生理反応が改善(Jamieson et al., 2013)。

自他距離化(第三者視点)は反芻を減らす(Kross et al., 2014)。

もし〜ならプラン(実装意図)ビンゴ
遊び方 「もし心拍が速くなったら、箱呼吸を3回」「もし待ち時間でイライラしたら、5-4-3-2-1をする」などをカード化し、実行できたらスタンプ。

根拠 実装意図は自己調整の自動化に有効(Gollwitzer, 1999; Adriaanse et al., 2011)。

5) 遅延・計画力(報酬遅延・目標管理)を鍛える遊び
– マシュマロの現代版(トークン貯金)
遊び方 小さな報酬をすぐ取るか、ポイントを貯めて大きな報酬に交換。

貯める戦略を皆で共有。

根拠 遅延選好はライフアウトカムと関連(Moffitt et al., 2011)。

訓練で中等度改善が可能(Duckworth et al., 2019)。

タイムバッファ・クエスト
遊び方 わざと小さな待ち時間や邪魔を設定し、「どう備え、どう対処したか」をポイント化。

ねらい 予期的自己調整とコーピングのリハーサル。

6) ディストレス耐性と安全な発散
– 温冷スイッチ(安全範囲での感覚刺激)
遊び方 冷感パックや手を冷水に10–20秒→呼吸で回復。

安全・短時間・合意の上で。

根拠 DBTのTIPPスキルは高覚醒の急速鎮静に有効(Linehan)。

青年での試験で自傷減少(Mehlum et al., 2016)。

感情の波サーフィン
遊び方 不快感を0–10で評価→2分間ただ観察→再評価。

「上がり下がり」をグラフ化。

根拠 マインドフルネスの脱中心化・受容が情動レベルを下げる。

7) クリエイティブ表現による自己調整
– 色で気分を描く、音で気分を奏でる
ねらい 言語化が難しい感情を安全に外化し、自己理解を促す。

根拠 アート/音楽活動はストレス低減・情動調整に効果が示唆(Cohen et al., 2016)。

同期リズムは自己調整と関連。

8) デジタル・バイオフィードバック系の遊び
– HRV/呼吸アプリで「スコアを協力して上げる」
ねらい 可視化で内的変化を学習。

親子・チームで共同調整。

根拠 HRVバイオフィードバックのメタ分析(Goessl et al., 2017)。

ただしゲーム化認知訓練の遠位転移は限定的で、選択と継続が鍵(Simons et al., 2016)。

年齢別・場面別の工夫
– 幼児〜低学年 身体を使う抑制ゲーム(だるまさん・シモンセズ)、感情カード、短い呼吸遊び。

成功経験を多く。

– 小学校高学年〜中高生 再評価ゲーム、実装意図、協力ボードゲーム、HRVアプリ。

自分で目標設定。

– 大人・職場 マイクロ・ブレイク呼吸、ストレス再評価ワーク、実装意図ビンゴ、会議前ムードチェック。

心理的安全性の確保。

– 神経多様性の配慮 刺激過多を避ける、手順を可視化、選択肢を用意、感覚過敏には静かな代替手段を。

効果を高める進め方
– 難易度の漸進性 うまくいく7割程度に調整。

負荷は一度に1つ。

– 状態の見える化 前後でムードメーター、脈拍/HRV、主観的緊張を記録。

– 振り返りの一言 「何がうまくいった?
次に試す1手は?」だけでも効果。

– 一貫した合図 STOP合図や呼吸カードを家庭・教室で共通化。

– モデリング 大人も一緒に遊び、失敗も言語化して見せる。

簡易モニタリング
– 週1回の自己評価(0–10)と「使ったスキル」チェックボックス。

– 教師/保護者の行動観察(例 BRIEFの簡易項目)。

– ミニ目標の達成率(例 「3回中2回、イライラ時に呼吸できた」)。

根拠のまとめ(代表例)
– SELプログラムのメタ分析で、自己調整・行動・学業に小〜中効果(Durlak et al., 2011; Taylor et al., 2017)。

– 実行機能遊びは抑制・注意転換に有効(Diamond & Lee, 2011; Zelazo & Carlson, 2012)。

– 感情ラベリングが情動反応を鎮める(Lieberman et al., 2007)。

– マインドフルネスは感情調整の改善(Zoogman et al., 2015)。

– HRVバイオフィードバックとペース呼吸の有効性(Lehrer & Gevirtz, 2014; Goessl et al., 2017)。

– 認知的再評価・ストレス再評価の効果(Gross, 2015; Jamieson et al., 2013)。

– 実装意図による自己調整の自動化(Gollwitzer, 1999)。

– 自己制御の発達が長期アウトカムと関連(Moffitt et al., 2011)。

– ただし、狭い課題訓練の遠位転移は限定的(Melby-Lervåg & Hulme, 2013; Simons et al., 2016)。

多様で文脈に近い練習が重要。

1週間サンプルプラン
– 月 ムードメーター+波乗り呼吸(5分)
– 火 だるまさんが転んだ(10分)+振り返り一言
– 水 物語の別エンディング(10分)
– 木 HRVアプリ協力チャレンジ(5分)
– 金 協力ボードゲーム(20分)+実装意図カード作り

注意と安全
– ディストレス系は安全範囲で短時間、合意の上で。

トラウマ既往がある場合は専門家と相談。

– 罰や恥ではなく、スキルの「発見と練習」に焦点。

失敗は学びの素材。

– 感覚過敏・医療的配慮が必要な場合は刺激と負荷を調整。

結論
自己認識と自己調整は、(1)気づく(ラベリング・内受容)、(2)落ち着かせる(呼吸・HRV・グラウンディング)、(3)止める/切り替える(実行機能)、(4)見方を変える(再評価)、(5)待つ・計画する(遅延・実装意図)という要素に分け、それぞれを「遊び」で繰り返し練習すると効果的です。

エビデンスは全体として小〜中の効果を示し、特に実生活に近い文脈での練習、振り返り、モデリングの組み合わせが鍵です。

継続的に、少しずつ難易度を上げながら、楽しさを核に据えることが、最も確実な上達の道です。

家庭や教室で今日から始められる簡単な遊びは何か?

感情コントロール(情動調整)は、叱られてから冷静になる、対立場面で言い直す、緊張をほぐす、嬉しさを適切に表すなど、日常のあらゆる場面で必要な力です。

難しい理論を知らなくても、家庭や教室で今日から始められる「遊び」化がとても効果的です。

以下に、準備が少なく短時間ででき、年齢や人数に合わせて調整しやすい遊びを具体的に紹介します。

最後に、なぜそれが効くのかという根拠もまとめます。

はじめに押さえる原則
– 短時間・高頻度 1回5〜10分を毎日。

反復が神経回路を強めます。

– 見える化 色・温度・カードなどで「今の気持ち」を外化する。

– 選択肢を用意 落ち着く方法を「技カード」にして選べるようにする。

– 共同調整(コレギュレーション) 大人が穏やかな声と呼吸で伴走する。

– 振り返り1分 終わりに「何がうまくいった?」を必ず言語化。

気持ちの温度計ゲーム(色・数字で見える化)

– 目的 感情を察知→言語化→強度の自己把握
– 用意 紙とペン(1〜10の温度計、または青〜赤の色帯)
– 手順
1) みんなで温度計を描く(1=とても落ち着く、10=爆発しそう)。

2) いまの自分の温度に丸をつける。

3) 3つのクールダウン技(深呼吸・水を飲む・3分離れる)から1つ選び実行。

4) 再測定して変化を共有。

– ねらい 自己モニタリングと「強度に応じた対処」を学ぶ。

– 時間 5〜7分
– 家庭/教室の工夫 教室なら壁に大型温度計、名札クリップで指差し。

家庭なら冷蔵庫マグネットで。

ストップライト(赤・黄・緑)ロールプレイ

– 目的 衝動の一時停止→選択→実行の手順化
– 用意 赤・黄・緑の紙カード
– 手順
1) 赤=ストップ(立ち止まり、手をお腹に)、黄=考える(3つの選択肢)、緑=行く(ベストを実行)を説明。

2) 短い場面カード(「順番を抜かされた」など)で練習。

3) 役割交代でロールプレイ。

– ねらい 実行機能と問題解決スキル。

– 時間 10分
– 低学年ならジェスチャー中心、高学年は選択肢を自分で生成。

感情ボール投げ

– 目的 感情語の拡張と対処法の想起
– 用意 柔らかいボール(各面に「うれしい/くやしい/こわい/がっかり」等を書いてもOK)
– 手順
1) ボールを投げ合い、受け取った人は「最近その気持ちを感じた場面」と「できる対処」を1つ言う。

2) 次の人へ。

– ねらい 語彙と対処リストの内在化。

– 時間 5分
– バリエーション 教室は内輪投げ、家庭は少人数でゆっくり。

5-4-3-2-1 グラウンディング かくれんぼ

– 目的 不安や怒りの高ぶりを今ここに戻す
– 用意 なし
– 手順
1) 見える5つ、触れる4つ、聞こえる3つ、嗅ぐ2つ、味わう1つを順に見つけて言う。

2) みんなでカウントし合う。

– ねらい 注意の切り替えと身体感覚への錨づけ。

– 時間 3〜5分
– 発達配慮 幼児は「色さがし(青を5つ)」に簡略化。

ロウソクとホットココア呼吸

– 目的 呼吸による自律神経の調整
– 用意 指でロウソクの形を作るだけ。

あれば軽い紙片や羽。

– 手順
1) ロウソク呼吸 鼻で4数えて吸う→口をすぼめて6数えてそっと吹く(ロウソクを消さないイメージ)。

2) ホットココア呼吸 香りを吸う→ゆっくり冷ますように吐く。

3) テーブルで紙片をふわっと遠くへ送るゲーム化。

– ねらい 長い呼気で落ち着きを促す。

– 時間 2〜4分
– 教室では移動前の合図として全員で。

タートル・テクニック(かめさんゲーム)

– 目的 怒りの初期サインに気づき、自分で落ち着く
– 用意 かめの絵カード
– 手順
1) 合図で「甲羅に入る」(腕で自分を包む)→目を閉じて呼吸3回→考える→出てことばで伝える。

2) ロールプレイで反復。

– ねらい 自己鎮静→表現のスキル連結。

– 時間 5〜8分

感情ビンゴ

– 目的 細やかな感情ラベリング
– 用意 感情語を並べたビンゴカード(楽しい/誇らしい/妬ましい/戸惑う等)
– 手順
1) 今日の出来事を出し合い、当てはまるマスに印。

2) 一列そろったら、その中の1語を使って文章化。

– ねらい 情動を正確に名づける力。

– 時間 10分
– 家庭なら3×3、教室は5×5やペア活動に。

物語スイッチ(再評価ゲーム)

– 目的 出来事の見方を柔らかく変える
– 用意 紙とペン
– 手順
1) 最近のモヤモヤを1文で書く。

2) 視点を3つにスイッチ(自分・友達・未来の自分)で書き直す。

3) 気持ちの変化を温度計でチェック。

– ねらい 認知的再評価の練習。

– 時間 8〜10分

思考探偵

– 目的 自動思考の検証とバランス思考
– 用意 探偵カード(証拠/反証/別の考え)
– 手順
1) 「どうせ失敗する」のような思考を1枚に書く。

2) 証拠と反証を2枚に分けて洗い出し。

3) バランスのとれた新しい考えを作る。

– ねらい 批判的思考で感情の波を下げる。

– 時間 10分
– 高学年以上向け。

小学生低学年は「本当かな?」質問ごっこに簡略化。

クールダウン・サイコロ

– 目的 対処法のレパートリー化
– 用意 6面サイコロと「技」カード(呼吸・水・10数える・絵を描く・外を1分見る・先生or家族に伝える)
– 手順
1) 温度が5以上の人がサイコロを振り、出た目の技を実行。

2) 効果を1〜10で評価。

– ねらい 試す→効き目を知る→自分の定番を作る。

– 時間 5分

協力ジェンガ(色ブロック×感情)

– 目的 緊張下での自己調整と協力
– 用意 ジェンガ(色テープで赤・黄・緑に)
– 手順
1) 赤ブロック=落ち着く技、黄=選択肢を3つ言う、緑=感謝を1つ言う、などルールを設定。

2) 倒れたら全員でロウソク呼吸3回。

– ねらい 遊びながら状態調整とチーム感。

– 時間 10〜15分

音楽ムードDJ

– 目的 気分の自己調整(上げる/下げる)
– 用意 短い曲のプレイリスト(落ち着く/元気/集中)
– 手順
1) 今のムードを温度計で示す。

2) 目標ムードを決め、曲を選んで1分聴く→呼吸とセットで変化を確認。

– ねらい 環境を使ったセルフマネジメント。

– 時間 3〜5分

ありがとうリレー(感謝ブーケ)

– 目的 ポジティブ感情の増強と関係性の強化
– 用意 紙(花の形だと楽しい)
– 手順
1) 互いに感謝を1つ書いて手渡し。

2) 集めて「ブーケ」にし掲示。

– ねらい ネガティブバイアスのバランス取り。

– 時間 5分

役割逆転シアター

– 目的 相手視点の理解と怒りの減衰
– 用意 簡単な場面カード
– 手順
1) もめがちな場面を短く演じる。

2) 役割を入れ替えて再演。

3) ベターな言い方を全員で考え再々演。

– ねらい 共感とスクリプトの獲得。

– 時間 10分

クールダウン・コーナーを「遊び化」

– 目的 自発的に落ち着ける環境の用意
– 用意 タイマー、温度計カード、技カード、柔らかいクッション、ぬいぐるみ
– 手順
1) 利用ルールを短く(3分/1回、終わったら報告)。

2) 入ったら温度計→技を1つ→再測定→1分ふりかえり。

– ねらい タイムアウトを罰ではなくスキル練習に変える。

– 時間 常設

観察とふりかえりのコツ(1分でOK)
– 今日使った技は?
効き目は0〜10で?

– 次に同じ場面が来たら何をする?

– 自分で自分を褒めたい点は?

– 教室なら週1でミニ記録(できたらシール)をつける。

年齢・特性への配慮
– 幼児 具体物・ジェスチャー・短時間(2〜3分×複数回)
– 小学校低学年 色・絵カード多め、ロールプレイ短め
– 高学年〜中高生 再評価・思考探偵・役割交渉など言語的活動を増やす
– 感覚過敏がある子 音楽や触覚刺激は選択制に
– 日本語語彙が少ない子 絵アイコンで代替

家庭と教室の「今日から」セットアップ例(15分)
– 紙に温度計と3つの技カードを作る(呼吸・水・外を見る)
– 赤黄緑カードを切ってリビング/教室前方に貼る
– タイマー(3分)とやわらかクッションを1つ置く
– 1日のどこかで「呼吸ゲーム2分+温度計チェック1分+ストップライトロールプレイ5分」を実施
– 夜(家庭)や帰りの会(教室)でふりかえり1分

なぜ効くのか(根拠)
– 感情のラベリング効果 言葉にすることで扁桃体の過活動が下がり前頭前野の制御が働きやすくなると報告されています(Lieberman et al., 2007)。

– 認知的再評価(リフレーミング) 出来事の解釈を変えると感情強度が下がり、長期的にウェルビーイングに寄与します(Gross, 1998; Gross & John, 2003)。

– 呼吸と自律神経 ゆっくりとした呼気優位の呼吸は心拍変動を高め、落ち着きと集中に関連します(Lehrer et al., 2000)。

– マインドフルネス/グラウンディング 注意を「今ここ」に戻す練習は情動反応性の低減と自己認識の向上に結びつきます(Keng et al., 2011)。

– 実行機能の訓練 ストップ・シンキング・ゴーなどの手順化は抑制・ワーキングメモリ・認知柔軟性を鍛え、行動の自己調整を高めます(Diamond, 2013)。

– 社会情動学習(SEL)全体効果 学校ベースのSELプログラムは、情動スキルと学業、行動の改善に中〜大の効果を示すメタ分析があります(Durlak et al., 2011; Taylor et al., 2017)。

– 感謝やポジティブ感情 感謝の実践は気分と対人関係の質を高め、抑うつを低減します(Emmons & McCullough, 2003)。

– 共同調整と安全感 大人の落ち着いた表情・声・呼吸は子どもの生理的安全感を高め、調整の学習を促します(Porges, 2011)。

また、周囲の支援による情動調整の発達は乳幼児から学童期まで一貫して重要です(Murray et al., 2015)。

– 忍耐・自己統制の学習可能性 待つ・選ぶのスキルは練習で伸び、長期的成果にも関連します(Mischel et al., 1989)。

参考(代表的研究)
– Lieberman, M. D. et al. (2007). Putting feelings into words reduces affective responses.
– Gross, J. J. (1998). The emerging field of emotion regulation; Gross & John (2003).
– Lehrer, P. et al. (2000). Respiratory sinus arrhythmia biofeedback.
– Keng, S.-L. et al. (2011). Mindfulness and psychological health.
– Diamond, A. (2013). Executive functions.
– Durlak, J. A. et al. (2011). The impact of enhancing students’ social and emotional learning.
– Taylor, R. D. et al. (2017). SEL follow-up effects.
– Emmons, R. A., & McCullough, M. E. (2003). Counting blessings.
– Porges, S. W. (2011). Polyvagal Theory.
– Mischel, W. et al. (1989). Delay of gratification.

最後に
感情コントロールは「できる/できない」ではなく「状況と強度に応じて調整する力」です。

短い遊びを毎日、失敗も含めて明るく反復し、大人が一緒にやって見せることが最大の近道です。

まずは「温度計+呼吸+ストップライト」の3点セットから始め、子どもたちが自分に合う技を見つけていくプロセスを楽しんでください。

年齢や気質に合わせてルールや難易度をどうカスタマイズすればよいのか?

目的
感情コントロール(気づく・言語化する・待つ/止める・切り替える・落ち着く・考え直す)を遊びの中で練習するには、年齢発達と気質に合った「ちょうどよい負荷」を設計することが重要です。

ここでは、調整の原則、年齢別・気質別の具体的カスタマイズ、代表的な遊びの改変例、難易度調整の手順、そして根拠となる理論・研究をまとめます。

基本原則(どの年齢・気質にも共通)
– 目標は「勝つ」より「スキルを微増させる」こと
– 1回あたり短く、成功経験を多く 成功率は70〜85%を目安
– 1度に変える要素は1つだけ(何が効いたかを見極めやすい)
– 事前の見通し→合図→振り返りの三段構成
– 失敗の安全性(やり直し可能・罰は最小、具体的称賛は最大)
– 共調整(大人の落ち着きとモデリング)を前提に

難易度を調整できる主な「ダイヤル」
– 情報量 ルール数、例外の有無
– 指示チャネル 口頭/視覚/身振り
– ターンの長さ 待ち時間、順番の人数
– ペース テンポ、時間制限の有無
– 不確実性 偶然要素(ダイス/カード) vs 予測可能性
– 競争度 対戦→協力→個人
– 刺激強度 音量、色、動き、触覚
– フィードバックの遅延 即時→遅延(我慢の練習)
– 報酬の種類 社会的称賛、ポイント、特権、物的
– 認知負荷 マルチタスク、逆転ルール、戦略要素

年齢別カスタマイズ
3–4歳(基礎 気づく・待つ・合図で止まる)
– ルールは1–2個まで。

視覚合図(赤/青カード、絵アイコン)を多用
– 即時フィードバックと短い回(1回3–5分)
– 身体を使う遊び中心(止まる/動く、真似っこ、呼吸を“見える化”)
– 感情語は「うれしい/かなしい/おこった/こわい」程度から。

顔カードでラベリング

5–6歳(切り替え・順番待ち・簡単な言葉化)
– 2–3段階ルール(例 赤で止まる+黄色でゆっくり)
– 短い待ち時間の導入(砂時計15–30秒)
– 選択肢を2択で与え、自主性を強化(どのクールダウンにする?)
– 簡単なふりかえり(今日できたことを1つ言う)

7–8歳(注意の持続・再評価の芽・軽い競争)
– ポイント制、タイマー、ターンベースのボード/カードを導入
– 自分の番以外は「観察役」など役割を与え注意を保つ
– 逆転ルール(いつもと反対)で抑制を練習
– 「もし〜なら」による考え直し(再評価)の練習を短く

9–12歳(戦略・メタ認知・協力と対立の切り替え)
– ルール交渉や役割交代を取り入れ、視点取得を促す
– 協力タスクで「計画→実行→ふりかえり」のサイクル
– 失点を「回復アクション」で取り返せる設計(修復志向)
– 確率やフェアネスを話し合う場を用意

13–18歳(自己調整・自己設定目標・ストレス耐性)
– 目標や難易度を本人が設定し、自己モニタリング表で追う
– タイムプレッシャー+回復技法(呼吸・セルフトーク)のセット練習
– 仲間とのルールメイク、合意形成、ディベート型の感情制御(挑発への対応、言い換え)
– デジタルツール(心拍センサー、マインドフルアプリ)との連携

気質別カスタマイズ
高感受性/高反応
– 刺激を減らす(音量小、光柔らか、観衆少なめ)
– 予告と見通し(スケジュールカード)。

サプライズは小さく短く
– セーフワード/退避コーナーを明示。

勝敗の強調は避ける
– 成功体験から階段状に負荷を上げる

低反応/のんびり
– 目標を明確にし、短い時間制限でリズムを上げる
– 即時の社会的称賛+可視化されたポイント
– 身体を使った導入で覚醒度を高める(ミニ運動→課題)

高活動/衝動傾向
– ターン短め、ルールはシンプルに。

外部合図(ベル、色カード)を使用
– 抑制ゲーム(赤青ストップ、音が止まったら凍る)を頻度高めに
– フィジェットや椅子バンドで「動きながら集中」を許容
– 目に見える「待つ」ツール(砂時計、指でカウント)

慎重/回避
– 事前に個別リハーサル。

最初は観察者→共同→単独の順
– 失敗してもダメージが小さい設計(やり直し券)
– 選択の自由度を上げ、コントロール感を担保

外向/社交的
– チーム戦や役割(応援係、タイムキーパー)で社会的報酬
– ただし割り込み・声量などのルールを明確化してから開始

内向/こだわり強め
– 一人プレイや協力モードを選択可。

環境予測可能性を高める
– 詳細ルールの安定性を重視。

変更時は事前通知と試走

神経多様性(ADHD/ASD/Sensoryなど)への配慮
– 指示は短く、1回1ステップ+視覚支援
– 感覚調整(ノイズ低減、重みブランケット、静かなコーナー)
– 強い関心領域を素材化して内発的動機づけを高める
– 頻回の運動休憩と明確な終了サイン

代表的な遊びと改変例
1) ストップ・ゴー(赤信号/青信号)
– 基本 合図で動く/止まる。

抑制・切り替えの基礎
– 易しく 距離短く、合図は色+音の二重提示、フェイントなし
– 難しく 黄色=スローダウン、フェイント導入、タイム制限
– 高反応児 音量低め、予告してからフェイントを少しずつ
– 高活動児 ターン間隔短く、成功ごとに具体的称賛

2) 感情ビンゴ/UNO(感情語カード)
– 基本 引いた感情を顔/声/体で表し、場面例を言う
– 易しく 基本4感情のみ、模倣中心、即時ヒント
– 難しく 混合感情、強度スケール、再評価(別の見方)を付ける
– ASD傾向 事前に語彙を写真や物語で明確化、選択式回答

3) バルーン・ブレス
– 基本 風船を落とさず、合図で呼吸→タッチ
– 易しく 1個、低刺激空間、回数を少なめに
– 難しく 複数個、役割交代、呼吸パターン変更(4-2-4など)

4) 逆転ルールゲーム(オポジット・デー)
– 基本 言われたことの反対をする(手を叩け→静止)
– 難易度 単語→フレーズ→ストーリー内の条件付きへ
– 年長 ストループ要素(文字「赤」を青色で表示)を加える

5) 協力タワー(ブロック/ジェンガ)
– 基本 静かに、順番に、計画→実行。

崩れても「修復ミッション」
– 難易度 制限時間、役割(ビルダー/ナビゲーター)付与、会話ルール

難易度の上げ下げ手順
– 成功帯指標 課題達成が7〜8割、感情の高ぶりが自己/他者の助けで2〜3分以内に回復できる
– 観察ログ 前後の情動強度(0–10)、失敗のパターン、回復手段の効果
– 微調整の順 刺激強度→待ち時間→情報量→競争度→不確実性の順で1つずつ
– 前向きフィードバック 行動を具体的に称賛(例「合図で3秒で止まれたね」)
– クールダウンの定番化 呼吸、給水、ストレッチ、気持ちカードを“いつでも選べる”状態に

保護者・指導者の関わり
– 事前に「できるようになりたいスキル」を1つ決め、合図とサポートを共有
– ふりかえりは短く具体的に。

「うまくいったこと1つ+次の一歩1つ」
– ルールは視覚化し、見通し(開始・終わり・ごほうび/選択)を明確化

根拠(理論・研究の要旨)
– ちょうどよい負荷と足場かけ ヴィゴツキーの最近接発達領域(ZPD)とスキャフォルディング。

できることの少し上を、大人の支援で達成する設計が学習効率を高める。

– 情動調整プロセス Grossのプロセスモデル(状況選択→状況変化→注意配分→認知的再評価→反応調整)。

遊びでは注意配分・再評価・反応抑制を段階的に練習する。

– 実行機能の発達 Diamondらの研究で、ルール切替・抑制・ワーキングメモリを鍛える遊び(Go/No-Go、逆転ルール、役割遊び)が自制を伸ばすことが示唆。

幼児教育プログラム(Tools of the Mind等)でも報告。

– 待つ力と遅延報酬 Mischelの遅延満足研究は、待つ場面の構造化(視覚遮断、注意転換)が自己制御を助けることを示す。

– 強化とシェイピング 行動分析学の逐次接近法で、望ましい行動を小さな段階で強化することが有効。

– 社会情動学習(SEL) メタ分析(例 Durlakら)で、SEL介入は感情調整・行動・学業を広く改善。

– 気質理論 Rothbartの気質モデルやBelsky/Pluessの差異感受性仮説は、同じ環境でも子どもによって反応が異なること、敏感な子ほど支援からの利益が大きいことを示す。

– ADHDにおける抑制と遅延の困難 Barkleyの理論に基づく外部合図・短いターン・即時強化の有効性。

– 内発的動機づけ 自己決定理論(Deci & Ryan)に基づき、選択の付与や有能感の支援が継続に寄与。

– 覚醒とパフォーマンス Yerkes–Dodsonの法則に沿って、過少/過多ストレスを避け中庸の挑戦度に調整。

よくあるつまずきと対処
– すぐ飽きる→ターン短縮、目標の細分化、役割追加、ペースアップ
– すぐ崩れる→刺激減、予告強化、退避ルール、成功基準を下げる
– 競争で荒れる→協力形式に切替、勝敗の代わりに「スキルポイント」
– 口頭指示が通らない→視覚化(カード/チェックリスト)、デモ見本

最後に
感情コントロールの学習は「短く・具体的に・繰り返し・少しずつ難しく」が鉄則です。

年齢発達に応じた土台のスキルを見極め、気質に合わせて環境とルールを調整することで、遊びは最良のトレーニング場になります。

強い困りが長期に続く場合は、専門職(公認心理師、作業療法士など)に相談し、個別化された評価と支援を受けることも検討してください。

学びの効果をどう観察・記録し、次の遊びに活かすにはどうすればよいのか?

以下は、感情コントロールを学ぶ「遊び」の効果を、現場で無理なく観察・記録し、次の遊び設計に確実につなげるための実践ガイドです。

保護者・教師・支援者が使える形で、根拠とともにまとめています。

まず「何を伸ばすか」を行動で定義する
感情コントロールは次の段階的スキルでとらえると記録しやすく、改善点が明確になります。

– 気づく(自分の体・気分の変化に気づける)
– 名づける(怒り・不安などを言葉や尺度で表せる)
– 選ぶ(適切な対処戦略を思い出し、選択できる)
– 使う(選んだ戦略を場面に合わせて使える)
– 回復する(強い感情から安全に戻れる)
– ふり返る(何がうまくいったかを言語化できる)

観察指標(例)
– トリガーに気づいた合図(「イライラメーター上がってる」と言えた回数)
– 感情ラベルの正確さ・自発性(支援なし/合図あり/モデル提示後)
– 対処戦略のレパートリー数(呼吸、数える、席を離れる、視点切替など)
– 発動の速さ(トリガーから戦略開始までの秒数=潜時)
– 回復までの時間(落ち着くまでの時間)
– 感情強度(自己申告0–5段階、観察者評価)
– 支援量(口頭合図、視覚合図、身体的支援の要否)
– 他者への影響(助けを求められた、トラブル回避できた等)

記録の方法(無理なく・信頼性を意識)
2-1. ベースライン

– 遊びを始める前に1〜3回、通常の場面で上記指標を簡単に記録。

初期値を持つことで効果を判定しやすくなります。

2-2. セッション中の観察
– ABC記録(Antecedent-Behavior-Consequence)
A: 何が起きたか(トリガー)
B: 子どもの反応(表情・言動・選んだ戦略)
C: 結果(落ち着いた/エスカレート/周囲の対応)
– 事象記録+時間指標
出た行動を数える(頻度)、戦略開始までの潜時、回復時間を秒で記録。

– 時間サンプリング
30秒ごとに感情強度(0–5)をチェック。

グラフ化しやすい。

– 自己報告ツール
感情温度計カード(0–5)、色カード(青=落ち着き/赤=怒り)を本人が指差し。

– 生理指標(任意)
スマートウォッチの心拍などは参考にはなるが、過度に依存しない。

本人の同意と負担軽減を優先。

2-3. セッション後のふり返り
– 3つの問いを固定化
何がサインだった?
何を使った?
次は何を変える?

– ゴール達成尺度(GAS)
個別目標を5段階で定義して当日スコアをつける(例:合図なしで呼吸法を開始=+1)。

– 短い自己記録
絵日記/スタンプで強度と使った戦略を1分で記録。

– 周囲からの報告
家庭・学校のミニチェック(週1回、SDQなどの簡易行動尺度の該当項目でも可)。

2-4. 信頼性の確保
– 行動の定義を具体化(例「呼吸法」=3回以上腹式呼吸を行う)。

– 可能なら二人で同時観察し一致率を見る(20%以上のセッションで)。

2-5. ツール例(紙1枚で足りる)
– 上段:本日の目標(例「合図前に自分で対処を1回」)
– 中段:ABC 3行、頻度/潜時/回復時間欄
– 下段:GAS、感情温度計の推移、自由メモ

データの読み取りと次の遊びへ活かす流れ
3-1. まず可視化

– 1枚グラフ
回復時間の折れ線、自己申告強度の推移、戦略使用の頻度棒グラフ。

– ヒートマップ
曜日×時間帯で強度を色分け。

トリガーの傾向を掴む。

3-2. 仮説を立てる
– 例「競争要素が強いと潜時が伸びる」「言語化ができる日は回復が速い」など。

3-3. 次回の設計に反映
– 難易度調整
刺激強度(競争/時間制限/偶然性)を1つだけ調整し、効果を比較。

– スキャフォルディングの段階化
視覚プロンプト→合図→モデル提示→自発へ。

達成できたら支援を薄める。

– 戦略のレパートリー拡張
呼吸法に加え、セルフトーク(「今は待てる」)、再評価(「負けても練習になる」)、問題解決(ルール交渉)を1つずつ導入。

– 一般化
新しい場面・相手でも同じ戦略を使う練習(家庭→学校、個人→ペア→小集団)。

– 目標の更新
GASで+1が2回続いたら目標を一段引き上げる(例:合図なしを2回→3回)。

3-4. 具体例
– 観察結果
トリガーは「順番待ち」。

潜時平均25秒、回復まで3分。

呼吸法は合図が必要。

– 次回の遊び調整
ルールに「待ち時間にやる行動カード(指タップ、数える)」を追加。

順番可視化(タイマー/名前カード)。

合図を視覚に置換。

成功したら即フィードバックと小さな報酬。

– 成果確認
潜時が15秒に短縮すれば次回は合図をさらに薄める。

小さく確実に効果検証する設計

– 単一事例デザイン
AB(ベースライン→介入)や多層ベースライン(場面ごとに開始時期をずらす)で変化の因果らしさを高める。

– ミニA/Bテスト
例:感情ラベル提示ありvsなしで回復時間を交互日で比較。

– 卒業基準
例:3回連続で自発的に戦略を使い、回復<90秒、強度3以下を維持。

フィードバックの出し方(学習科学に基づく)

– 直後・具体・肯定
行動名+効果を伝える(「自分で3回深呼吸したから、30秒で落ち着けたね」)。

– メタ認知を促す短問
「合図なしでできたのは何が効いた?」のように自分の方法に気づかせる。

– スペースド練習
同じ戦略を間隔を空けて複数場面で反復。

忘却を防ぐ。

配慮事項

– 本人の同意と選択権を尊重。

嫌がる計測は避ける。

– 負荷を上げるのは1要素ずつ。

成功体験を優先。

– 行動に困りが強く、生活に支障が大きい場合は専門職(心理・医療)に相談。

参考になる尺度・ツール(日本語で使いやすいもの)

– 強さと困難さ質問紙(SDQ):情動症状や多動などを簡便に把握(日本語版あり)。

– 簡易自己報告スケール:感情温度計(0–5)、表情カード。

– ゴール達成尺度(GAS):個別目標の進捗を可視化。

– 観察シート自作のコツ:行動の定義を1行で、時間・頻度・支援量の欄を必ず設ける。

根拠(要点)

– 社会情動的学習(SEL)のメタ分析では、系統的なスキル指導と振り返りを含むプログラムは感情調整・行動・学業を広く改善(Durlak et al., 2011)。

– 感情の「ラベリング(言語化)」は生理反応と主観的強度を下げうることが実験研究で示唆(Lieberman et al., 2007:言語化で扁桃体反応が低下)。

– 認知的再評価や問題解決、マインドフルネスなどの戦略訓練は子どもの自己調整に有効という系統的レビュー(例:Dunning et al., 2019;Zenner et al., 2014)。

– 行動観察のABC分析や単一事例デザインは実践場面での効果検証に適しており、質的指標と量的指標の併用が推奨(Horner et al., 2005;Cooper et al., 2020)。

– ゴール達成尺度(GAS)は個別化された目標の進捗評価法として妥当性と実用性が報告(Turner-Stokes, 2009)。

– 尺度の多面的報告(本人・保護者・教師)を組み合わせるトライアングレーションは妥当性を高めるとされる。

すぐに始められるミニ手順(5分準備)

– 今日の1目標を書く(例:合図前に自分で呼吸を1回)
– 感情温度計カードを用意(0–5)
– ABC欄と時間(潜時/回復)欄だけの紙を1枚
– セッション後にGASを1スコア、本人の一言をメモ
– 次回の変更点を1つだけ決める(支援を薄めるor刺激を弱める/強める)

要するに、効果を「気づく→名づける→選ぶ→使う→回復→ふり返る」の各段階に分解し、頻度・時間・強度・支援量という測りやすい指標で記録し、1要素ずつ調整して次の遊びに反映することがコツです。

これにより、遊びが「楽しいだけ」で終わらず、確かな学びのサイクルとして機能します。

【要約】
遊びは失敗コストの低い安全な場で好奇心を促し、内発的動機づけにより反復が続く。ルールと即時フィードバックで実行機能が鍛えられ、模擬的な高覚醒体験でブレーキや撤退を学ぶ。共同注意と物語化・ラベリング・身体調整・ポジ感情・フローが働き、感情を柔軟に扱う力が総合的に育つ。他者とのコレギュレーションで興奮を整え、リフレーミングで意味づけを切替。言語化は扁桃体反応を弱め、身体感覚からの落ち着きも学ぶ。ポジ感情が視野を広げ資源を蓄える。

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