コラム

「学校生活×放課後支援」連携のすべて 必要性から実践・評価まで

なぜ学校生活と放課後支援の連携は今、重要視されているのか?

学校生活と放課後支援(学童保育、放課後等デイサービス、地域子ども教室、部活動の地域移行、学習支援・居場所事業など)の連携がいま特に重要視されるのは、子どもを「授業の時間だけ」で捉える時代が終わり、学び・育ち・生活支援を「日中から放課後まで切れ目なく」統合する必要が高まっているからです。

背景と根拠、そして連携の意味と効果を具体的に整理します。

重要視される背景(なぜ今か)

– 不登校・行きしぶりの増加と多様化
文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等調査」では、不登校は近年連続で過去最多を更新しています。

要因は多様で、学習不安、同級生関係、生活リズム、発達特性や心身の不調などが複合しやすく、学校時間内だけでは支え切れません。

放課後の居場所・支援と継ぎ目なくつながることで、登校以外の安全な接点や学習・社会性の回復機会を確保できます。

共働き世帯の増加と家庭の多忙化
厚生労働省等の統計が示すように共働きは一般化しました。

家庭が補ってきた「見守り・生活リズムづくり・学習習慣化」を学校だけに任せられず、放課後の時間帯に教育的・福祉的機能を配す連携が不可欠です。

発達障害・医療的ケア児等への切れ目ない支援
早期発見・早期支援の重要性は定着し、学校の個別の教育支援計画と、福祉の個別支援計画(放課後等デイサービス等)をすり合わせる意義が高まっています。

合理的配慮や環境調整、学習課題の段階づけが、日中・放課後で一貫して実装されると効果が増幅します。

非認知能力・ウェルビーイングへの関心
OECDや国内研究が示すように、協調性、自己制御、レジリエンスなどの非認知能力は人生成果に強く関連します。

これらは体験活動・小集団活動が多い放課後に育ちやすく、学校カリキュラムと連動させることで伸長が加速します。

ポストコロナの学びの回復と多様な学び方
学習の遅れや人間関係の希薄化に対応し、補習・教科学習の個別最適化、プロジェクト型・探究型活動、地域人材との協働など、放課後の柔軟な枠が学校の学びを補完・発展させます。

地域学校協働・部活動の地域移行・教師の働き方改革
地域学校協働活動の法制化(コミュニティ・スクール化の推進)や部活動の地域移行が進み、学校外の資源と教育活動が制度的に接続されつつあります。

放課後の受け皿との連携は、子どもの経験の幅を拡げ、教員負担の適正化にも寄与します。

連携がもたらす具体的な効果

– 学習面の相乗効果
学校の単元や評価観点と、放課後の学習支援・探究活動を接続すると、定着・活用・探究の循環が生まれます。

宿題支援だけでなく、端末やポートフォリオの共有により、個別課題の継続的フォローが可能に。

早期発見・早期支援の精度向上
放課後に見えるサイン(疲労、対人ストレス、家庭内変化)を学校と共有し、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーにつなぐことで、虐待・ヤングケアラー・貧困などのリスク対応が早まります。

インクルーシブ教育の実質化
学校での合理的配慮(座席・時間割の調整、視覚的手がかり等)が放課後でも継続されると、児童本人の成功体験が増え、行動面の安定と自己効力感が向上します。

逆に、日中と放課後で支援が断絶すると逆効果になりがちです。

居場所・関係資本の拡充
放課後は異学年や地域大人との関係が生まれやすい時間です。

多様な関係はストレス耐性と進路探索に資する「関係資本」となり、孤立感の緩和に直結します。

安心・安全と生活リズムの確立
規則正しい帰宅時間、食・睡眠・運動のリズム作りを、学校と放課後でメッセージを揃えて支えることで、遅刻・欠席や課題未提出が改善しやすくなります。

根拠(研究・政策・統計の示すところ)

– 国内政策・制度面
文部科学省は地域学校協働活動やコミュニティ・スクールの推進、問題行動・不登校等調査での増加傾向の公表を通じ、学校と地域・放課後の接続強化を位置づけています。

厚生労働省は放課後児童健全育成事業(学童)や放課後等デイサービスのガイドラインで、学校等との連携・情報共有(保護者同意のもと)を明記。

2020年代の報酬・運営基準の見直しでも、計画の質と連携の実効性が重視されています。

部活動の地域移行はスポーツ庁・文化庁方針として段階的に進行中です。

統計・社会的ニーズ
不登校は近年過去最多を更新。

共働き世帯増加と子どもの相対的貧困が一定規模で存在することも公的調査で繰り返し示され、放課後の見守り・学習・居場所ニーズは恒常的です。

学術研究
国際的には、放課後プログラムのメタ分析(例 Durlak, Weissberg, Pachan, 2010)で、適切に設計された放課後活動が学業・社会性・問題行動の抑制に有意な効果を持つと報告されています。

OECDは社会情動的スキルの重要性を示し、学校外の学びと学校内学習の接続がアウトカムを高めると提言。

国内でも学習支援×居場所型のプログラムで、出席状況や学習意欲の改善が報告されています(自治体・NPOの評価報告等)。

実務的根拠(現場の知見)
ケース会議で学校の個別の教育支援計画と放課後の個別支援計画を擦り合わせ、同一の目標指標(例 授業中の着席持続、提出物の期日遵守)を設定すると、行動改善の速度が上がる事例が多数。

逆に、情報が遮断されると「二重基準」になり、児童が混乱することが指摘されています。

連携の具体と留意点

– 情報共有の原則
保護者の明確な同意を得て、目的・範囲・保管方法を明示。

最小限必要な情報に限定し、児童生徒の尊厳とプライバシーを守る。

個別計画の整合
学校の評価観点(知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学ぶ態度)と、放課後の活動目標(例 課題完了、社会性、自己調整)をマッピングし、週単位でPDCAを回す。

多職種連携
担任、特別支援コーディネーター、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、医療・福祉専門職、放課後事業所の指導員がケース会議を定例化。

データとICT
GIGA端末・学習ポートフォリオを介した課題共有、連絡ツールの標準化、出欠・課題提出・行動観察の簡易ダッシュボード化。

ただしセキュリティを厳格に。

危機対応の合意
体調悪化・安全リスク・虐待疑い等のフローを学校・放課後・保護者・関係機関で共有し、初動を迅速化。

成果の測り方(エビデンスを作る)

– 学習 基礎到達度、課題完了率、提出の期日遵守
– 生活 欠席・遅刻の減少、睡眠時間・朝食率等の自己報告
– 社会情動 自己効力感、友人関係満足度、問題行動指標
– ウェルビーイング 主観的幸福感、学校・放課後双方の満足度
– 継続性 学期をまたいだ支援継続率、転出入時の引継ぎ完了率

課題と対策

– 個人情報保護と同意運用の徹底(同意書の標準様式化)
– 人材不足への対応(地域ボランティア・民間との協働、研修の共通化)
– 質のばらつき是正(ガイドライン準拠、外部評価と第三者アドバイザリー)
– アクセス格差(経済的負担軽減、交通手段・送迎の工夫、オンライン併用)
– 目的の逸脱防止(学習だけ・預かりだけに偏らないバランス設計)

まとめ
学校生活と放課後支援の連携は、学力向上だけでなく、非認知能力、ウェルビーイング、安心・安全、インクルーシブ教育を包括的に実現するための中核戦略です。

政策面では地域学校協働や部活動地域移行、福祉ガイドラインで連携が求められ、統計はニーズの拡大を示し、研究は適切な放課後プログラムの効果を裏付けています。

連携の質を左右するのは「合意に基づく情報共有」「個別計画の整合」「多職種の定例協議」「測定に基づく改善」です。

学校と放課後が同じ羅針盤を持ち、子どもの一日を切れ目なく支えることこそ、いま最も費用対効果の高い投資と言えます。

連携が子どもの学習・発達・生活面にもたらす具体的な効果とは?

ご質問の「学校生活と放課後支援(学童・学習支援・放課後等デイサービス・地域クラブ等)の連携が子どもの学習・発達・生活面にもたらす具体的効果」と、その根拠について、できるだけ実証研究に基づき整理します。

ここでいう「連携」は、学校と放課後の事業者・地域・家庭が、子どもの目標と支援方針・情報・実践を共有し、一貫性のある支援を運営することを指します。

1) 具体的な効果(学習面)
– 学力・課題達成の向上
– 宿題の遂行率・質の改善、基礎的な読み書き計算の定着、定期テストや標準化テストの得点の伸びが報告されています。

特に学校で扱う内容と放課後支援の教材・指導法を意図的に整合させると効果が高まります。

– 教師と放課後スタッフが課題の優先順位や評価基準を共有すると、子どもは「何をどう頑張ればよいか」が明確になり、取り組みの持続時間と集中度が上がります。

– 出席・学習時間の拡張と学習習慣の形成
– 放課後の安全で構造化された環境は、学習時間を無理なく増やし、欠席・遅刻の減少につながります。

継続的な通所・参加ができれば、自己調整的学習(計画→実行→ふり返り)も育ちます。

– 苦手領域の個別最適化
– 学校の評価データ(単元テスト、観察記録)と放課後での学習記録を結び、つまずき箇所を共通理解することで、個別のミニ目標(例 音読の正確さ、筆算の桁借り)が明確になり、小さな達成を積み上げやすくなります。

2) 具体的な効果(発達・社会情緒面)
– 社会情動的スキル(SEL)の向上
– 自己認識・感情調整・対人スキル・責任ある意思決定などのSELは、学校と放課後の場で同じ言葉・同じ手順(合図、リマインダー、振り返り)で教えると定着しやすく、教室での学習行動(発言の順番を待つ、課題に向き直る)が安定します。

– 自己効力感・学習意欲の向上
– 大人が一貫して「できたプロセス」を承認する文化が、子どもの有能感を高め、難題に挑む粘り強さ(グリット)を育てます。

放課後は成功体験を設計しやすく、学校側と達成の共有をすることで、翌日の教室での自信につながります。

– 問題行動の減少と帰属意識の向上
– 放課後の安全な居場所が「放課後ハイリスク時間帯」の逸脱行動を予防し、学校・地域に「自分の居場所がある」という感覚を強めます。

これが不安やストレスの軽減、対人トラブルの抑制に結びつきます。

3) 具体的な効果(生活・健康面)
– 規則正しい生活リズムの形成
– 下校→軽食→宿題→遊び→帰宅→就寝といったルーティンが確立しやすく、過度なスクリーンタイムや寝る時間の後ろ倒しを防ぎます。

– 身体活動・栄養の改善
– 放課後の運動プログラムや軽食の提供は、日常の活動量と栄養摂取の質を底上げします。

体力がつくと注意集中の持続にも好影響が出ます。

– 家庭との橋渡し
– 学校からの連絡や学習の見通しを放課後で保護者に伝達・解説することで、家庭学習の不安が減り、保護者の関与が質・量ともに向上します。

4) 特別な支援ニーズのある子どもへの効果
– 一貫した支援とスキルの般化
– 発達障害や行動上の困難がある子どもでは、学校の個別指導計画(IEP等)と放課後等デイサービスの個別支援計画を連動させ、同じ合図・ビジュアル支援・強化子(ほめ方・報酬)を用いることで、教室で身につけたスキルが放課後・家庭へ、放課後で練習したスキルが学校へと移りやすくなります。

– 危機予防とポジティブ行動支援
– トリガー(混雑、音刺激、課題の量)と効果的な調整(選択肢の提示、タスク分割、休憩タイミング)を共通化すると、メルトダウンや逸脱の頻度・強度が減ります。

– 保護者支援の一体化
– 学校・事業所・家庭で目標が一本化されると、保護者の負担が軽くなり、家庭内でも同じ支援が再現でき、学習・生活の改善が持続します。

5) 機会格差の縮小(公平性)
– 資源へのアクセスの拡大
– 無料/低廉な放課後学習支援・文化スポーツ体験と学校の連携は、家庭の経済状況に起因する学習機会の格差を埋め、夏休み・放課後の「学びの空白」や孤立を防ぎます。

– ネットワーク・ソーシャルキャピタルの形成
– 地域の大人との関係、進路・職業への接触点が増え、非認知スキルと進学・就業への期待が高まります。

6) 連携を効果的にする実装条件(何が効くか)
– 共有目標と計画の一本化
– 学校の学級経営方針・個別目標と、放課後プログラムの到達目標を1ページで見える化(例 算数の計算流暢性、感情調整の手順、宿題の自立)。

– データの共同活用と定期カンファレンス
– 出欠、課題達成、行動記録、SDQ等の尺度、簡単な到達度チェックを、保護者同意のもと安全に共有。

月1回程度のミニ会議でPDCA。

– 実践の一貫性(共通言語・手順)
– 合図の言葉、掲示物の形式、トークンエコノミーや自己モニタリングの方法を合わせる。

SELプログラム(例 Second StepやRULER等)を学校と放課後で同テーマ・同スキルで扱う。

– 役割分担の明確化と専門性
– 学校はカリキュラムと評価、放課後は個別練習・体験・関係づくりに強み。

相互に研修見学を行い、支援技法(エビデンスに基づく読みの指導、行動支援、感情コーチング等)を共通研修。

– 子ども・保護者の参画
– 目標設定に本人の声を入れ、保護者の価値観・生活状況を踏まえて現実的なプランにする。

– 十分な「量」と「質」
– 週2–3回以上の参加、安定したスタッフ配置、少人数(必要に応じて小集団/個別)での丁寧な関わりが、定着率と効果を高めます。

– 倫理・ガバナンス
– 同意にもとづく情報連携、個人情報の保護、成果の可視化、改善サイクル。

支援の「やりっぱなし」を避け、効果を測って調整する。

7) 効果測定の指標例
– 学習面 宿題遂行率、課題の正答率、単元テスト・標準化テスト、読書量、ノートの質
– 発達面 SELスキルの観察、自己効力感尺度、SDQ/CBCL等の行動評価、欠席・遅刻・指導記録
– 生活面 就寝・起床時刻、スクリーンタイム、身体活動量、主観的ウェルビーイング、保護者・本人満足度
– 特別支援 IEP/個別支援計画の目標達成度、問題行動の頻度・持続時間、般化の確認(学校⇄放課後⇄家庭)

8) 根拠(主な研究・公的資料)
– Durlak, Weissberg, and Pachan (2010). After-school programs meta-analysis
– 個人・社会的スキルを系統立てて教える放課後プログラムは、自己概念、学校への結びつき、行動、成績やテストスコアの有意な改善をもたらすことを示した。

安全で順序立てた活動、能動的学習、明確な焦点(SAFE原則)が鍵。

– Lauer et al. (2006). Out-of-school-time programs meta-analysis
– 学習困難・低所得層の児童に対し、読み・数学の成績が有意に向上。

学校のカリキュラムに沿った補充学習と十分な実施時間が効果的。

– Vandell, Pierce, and colleagues(2007以降の縦断研究)
– 質の高い放課後活動への継続参加は、宿題の質、課題への持続、対人スキル、問題行動の低減、学業成績の向上と関連。

– Durlak et al. (2011). School-based SEL meta-analysis
– 学校でのSEL実施により、社会情動スキルとともに学業成績が平均で約11パーセンタイル向上。

放課後と整合したSELは般化を促す理論的根拠に。

– 21st Century Community Learning Centers(米国連邦事業)評価
– 宿題遂行、出席、保護者関与が改善するという所見が多数。

学力の伸びはプログラムの質と学校との整合性に依存。

– CDC (2021). School Connectedness
– 学校への帰属意識の強化は、リスク行動の抑制、メンタルヘルス、学業へのポジティブな影響をもつ保護要因。

放課後の関係性づくりと学校の取組が連動する意義を示す。

– Cooper et al. (2006/2000). 宿題研究のレビュー
– 宿題は特に中等教育段階で学力にプラス。

放課後で宿題の理解・計画を支えることの意味づけに。

– Beets et al. (2009) ほか 放課後の身体活動プログラム研究
– 放課後プログラムは日常の中強度〜高強度活動の確保に寄与し、自己調整や学習集中へ波及。

– 特別支援領域(行動支援・ASD関連)
– Horner et al. (2002) Positive Behavior Supportの総説 環境調整と一貫した強化が問題行動を減少。

– Stahmer & Pellecchia(2015前後のレビュー) 学校・地域のサービスが連動し、親・教師・セラピストが同じ実践を用いると、技能の般化と維持が改善。

– Wraparound(包括的支援)の効果
– Suter & Bruns (2009) メタ分析 多機関連携の包括支援は行動・機能面で中程度の効果。

家庭・学校・地域が共通計画で動くことの有効性を示唆。

– 日本の制度・指針
– 文部科学省「地域学校協働活動」「放課後子ども総合プラン」 学校と地域・放課後の協働を推進し、学習・体験・安全な居場所の提供を位置づけ。

各自治体の実践報告では、学習意欲・自己肯定感・出席の改善などが報告されている。

– 厚生労働省「児童発達支援・放課後等デイサービス ガイドライン」 個別支援計画の質向上、関係機関との連携、家族支援の重視を明記。

学校との情報共有・目標整合が望ましいとされる。

9) リスクと留意点(効果を損なわないために)
– 目的のズレ 学力補充か体験重視か、SELか、優先順位を合意しないと希薄化。

→年2回以上の合意形成と計画更新。

– 質のばらつき マンパワー不足や研修不足で「預かり」に終始。

→共通研修・観察による質保証、エビデンスに基づくプログラム導入。

– 情報共有の不備 個人情報の扱いへの不安。

→同意取得、最小限必要な情報、保管ルールの明確化。

– 過密化 放課後の予定詰め込みによる疲弊。

→休息・遊びの時間を確保し、週内の負荷バランスを調整。

– 再生産する格差 参加費やアクセスの障壁。

→公的支援、交通支援、貸出教材などで参加ハードルを下げる。

まとめ
学校と放課後支援が「子どもの目標・方法・情報」をそろえて動くと、学習の定着、自己調整や対人スキルの発達、生活習慣やメンタルの安定、特別支援ニーズに対する般化・維持、ひいては機会格差の縮小にまで波及します。

実装の鍵は、共有目標・一貫した実践・データに基づくPDCA・保護者参画・十分な量と質です。

国内外の研究は、整合性のとれた放課後プログラムが学力と社会情動面の双方に有意な利益をもたらすこと、特に脆弱な立場の子どもほど効果が大きいことを示しています。

現場では「小さな共通化(同じ合図・同じ振り返り)」から始め、定期的な情報交換と質保証を積み重ねることが、連携の実効性を高める近道です。

学校・家庭・放課後支援が効果的に情報共有と目標設定を行うには?

ご質問のテーマは、主に「学校生活(学校)」「家庭(保護者)」「放課後支援(例 放課後等デイサービスや学童等)」の三者が、子どもにとって一貫性のある支援を実現するために、どう情報共有と目標設定を行うか、そしてその根拠は何か、という点だと理解しました。

以下では、目的、具体的な方法、運用のポイント、想定される障壁と対策、根拠(政策・研究)を順に整理します。

なぜ三者連携が重要か(狙いと効果)

– 一貫性の確保 学校と放課後で支援方針や声掛けがズレると、子どもは混乱しやすくスキルの汎化が難しくなります。

統一された目標・指導法・期待行動があると、学習や行動スキルが異なる場面でも安定して発揮されやすくなります。

– 強みを活かした支援 家庭は日常生活の様子、学校は学習・集団活動、放課後支援は小集団・個別練習といったように、各場面で見える「強み」や「困り」の情報が異なります。

三者で補完的に捉えることで過不足のない計画が立ちます。

– 早期発見・早期対応 欠席増、課題回避、友人関係のつまずきなどの兆候を、複数の場で早くキャッチし、重症化を防ぐ確率が上がります。

– 保護者負担の軽減 同じ説明を何度も求められない、連絡が一本化される等により、家庭の負担が軽くなり協働が進みます。

何を共有するか(共有項目の基礎)

– 子どものプロフィール 強み・興味、得意な学習様式、苦手の傾向、感覚の特徴、成功しやすい条件(例 視覚手掛かり、短時間課題、見通し提示)。

– 目標と優先順位 学習(例 読解、算数の基本技能)、社会情動(例 感情の自己調整、依頼の仕方)、生活(例 身支度、持ち物管理)など、各領域で学期内に到達したい目標。

– 具体的支援方法 合図の仕方、強化子(褒め方・ごほうび)、環境調整(座席配置、視覚スケジュール)、課題調整(量・時間・提示方法)、危機時対応(エスカレーションサインと鎮静手順)。

– 進捗データ 簡便な指標(提出率、課題完了数、遅刻・早退、行動の頻度、自己申告のストレスレベル等)と短い質的メモ。

– 連絡ルール 緊急/通常連絡の手段、窓口、タイムライン、個人情報の扱い。

どう共有するか(体制とツール)

– 役割と窓口の明確化 
– 学校 担任+校内の特別支援コーディネーター等
– 放課後 児童発達支援管理責任者(または責任者)
– 家庭 保護者代表(必要に応じて家族内の分担も合意)
– 連絡の一次窓口(コーディネーター)を一人決め、情報の集約と配信を管理
– 同意と守秘の手続き 
– 保護者の明示的同意に基づく情報連携(最小限必要な情報の共有、目的・範囲・保存期間を明記)
– 学校・事業所の個人情報保護規程に沿う。

機微情報は要約共有、詳細は必要時のみ
– 定期的な「三者ミーティング」の設定 
– 学期はじめ 共同アセスメントと目標設定(60分)
– 学期中 月1回のショートレビュー(20~30分、オンライン可)
– 学期末 振り返りと次学期に向けた改訂(45~60分)
– 日常の簡易共有 
– 連絡ノートや保護者アプリ(学校の連絡アプリ、事業所の業務アプリ等)。

テンプレート化(今日できた/困った/次に試す)
– 週次サマリー 数値+短評(例 提出率80%→90%、友だちとのトラブル0件、視覚スケジュール有効)
– 観察とフィードバックの相互乗り入れ 
– 相互観察(学校での支援を放課後スタッフが見学、逆も可)を合意の上で実施し、実践の共通理解を深める
– 共通フォーマット 
– ワンページプロフィール(強み・配慮・有効な支援)
– 共同目標シート(項目、基準、測定方法、担当、期日)
– ABC記録(行動の前後関係)やトークンシステムの設定票など

目標設定の実際(質の高い目標の作り方)

– 評価の枠組み ICF(国際生活機能分類)や「学習・行動・生活・社会情動」の多面的観点から、機能と環境の相互作用で捉える。

必要に応じて機能的行動アセスメント(FBA)を活用。

– SMART+汎化志向 
– Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(教育的妥当性)、Time-bound(期間明確)
– 家庭・学校・放課後の少なくとも2場面で汎化可能に設計
– 数を絞る 優先度の高い2~3目標に集中し、他は維持・観察に回す
– 子どもの参画 本人の希望や関心(ゲーム、運動、創作等)を強化子・教材に反映し、自己評価の場を設ける
– 例(社会情動) 学期末までに、困り感が高い場面で「5分休憩を要求する」自己主張を、提示されたカードまたは口頭で週3回以上、教室と放課後の両方で実行する。

測定は自己申告+スタッフ記録。

– 例(学習) 算数の四則混合10題を、タイムタイマーを用い15分以内に80%以上正答。

学校で週2回、放課後で週1回の練習。

家庭では5題の宿題で維持。

モニタリングと改善(PDCA)

– Plan 目標と支援を合意
– Do 3~4週間実施。

支援の忠実度(決めた支援が実際にどれだけ行われたか)も簡易チェック
– Check データとエピソードから効果検証。

うまくいった状況の共通要因を抽出
– Act 介入強度(頻度・視覚支援・課題調整)を調整。

改善策を次サイクルへ
– 見える化 簡単なグラフやチェックリストを共有し、子ども本人も振り返れる形に

ICT活用とセキュリティ

– ツール 共同ドキュメント(アクセス権限定)、セキュアな連絡アプリ、カレンダー共有
– ルール 端末の持ち出し禁止、アクセスログの管理、退職・異動時の権限剝奪
– インシデント時の連絡フロー 一次連絡(誰が誰に、何分以内)、記録、再発防止策

よくある障壁と対策

– 時間が取れない 学期初と末だけ対面、途中は10~15分のオンライン定例で最低限を担保。

非同期の週次サマリーで負担軽減
– 用語の違い 共通用語リストを作り、専門語は具体例とともに短く説明
– 目的がズレる 最初に「今年の上位目標(最大3つ)」を合意し、すべての個別目標をその上位目標に紐づける
– 情報過多 要点1枚(A4)に強み・配慮・危機対応を集約し、詳細は必要時に参照
– 担当の異動 引継ぎチェックリストを標準化。

コア情報はワンページプロフィールに集約

ミニケース(イメージ)

– 目標 朝の着席と課題開始を5分以内にできる
– 支援 視覚スケジュール、タイムタイマー、最初の課題は成功しやすい1問から、達成後に選択活動1分
– 共有 学校で成功した「着席→1問→選択活動」の流れを放課後でも導入。

家庭は翌日の持ち物を前夜リスト化
– 結果 2週間で平均開始時間が8分→4分に短縮。

放課後でも課題の取り掛かりが向上。

次サイクルで課題量を段階的に増量

根拠(政策・ガイドライン・研究)

– 日本の制度・ガイドライン
– 文部科学省は「チームとしての学校」や特別支援教育の充実で、校内外の多職種・関係機関との連携を推奨。

学校・家庭・地域が協働する体制整備が示されています。

– 厚生労働省の「放課後等デイサービス ガイドライン」では、アセスメントに基づく個別支援計画の策定、モニタリング、学校や関係機関との連携が必須事項として明記。

家庭・学校との連携により支援の一貫性と質が高まるとされています。

– 障害者差別解消法および教育分野の合理的配慮ガイドラインは、本人の状況に応じた環境調整と関係者間の合意形成を重視しています。

– 研究的根拠
– 家庭と学校が協働する枠組み(Conjoint Behavioral Consultation Sheridan & Kratochwill)は、学業・行動の改善と親教師関係の満足度向上をもたらすことが複数研究で示されています。

– 学校全体での予防的行動支援(PBIS/MTSS)は、問題行動の減少・規律処分の減少・学校気候の改善を示すエビデンスがあり、家族・地域の巻き込みが効果を高める要因と報告されています(例 Bradshawらの実証研究)。

– 社会情動的学習(SEL)プログラムのメタ分析(Durlakら, 2011)では、系統的実施により学業成績・行動・情動面に有意な改善が見られ、家庭や地域との連携要素を含むプログラムは効果がより持続的になる傾向が指摘されています。

– Wraparoundモデルのレビュー(Bruns & Suterら)は、家族主導・多機関連携により出席・行動・地域生活の成果が向上することを示しています。

– 実践知
– 行動支援は「一貫性」と「忠実度」が鍵であり、場面間で同じ合図・同じ強化を使うほど学習が早まることは行動分析の基礎知見と一致します。

– ICFに基づく環境調整(見通し、物理的・社会的環境の整え)と個の強み活用は、特別支援教育の国内ガイドラインとも整合します。

まとめ(実装の要点)

– 三者それぞれに「窓口」を定め、同意のもとで定期・簡便・安全に情報共有する
– 目標は少数精鋭でSMART、かつ複数場面で汎化できるよう設計
– 日々の小さなデータと成功事例を集め、月次でPDCAを回す
– 子ども本人の声と強みを中心に据え、一貫した支援を積み上げる

これらを続けることで、学校と放課後、家庭の支援が相互に補強し合い、子どもの学びと生活の安定、自己効力感の向上につながります。

最初は少し手間がかかりますが、テンプレート化と定例化で負荷は確実に下がり、効果は積み上がっていきます。

連携を阻む主な課題は何で、どのように乗り越えられるのか?

ご質問の趣旨は、学校生活(授業・学級経営・生徒指導・部活動等)と放課後支援(学童保育、放課後子ども教室、放課後等デイサービス、地域クラブ活動など)をどう結び、子どもの学びと育ちを切れ目なく支えるか、その際に連携を阻む主な課題と乗り越え方、さらに根拠を知りたいということだと理解しました。

以下に、実務で役立つ観点とエビデンスをまとめます。

連携が重要な理由

– 学習効果と非認知能力の相乗効果 授業での学びを放課後に復習・応用し、社会性や自己調整など非認知能力を育むと、双方が高まりやすい。

– 早期発見・早期支援 学校での気になるサインが放課後でも継続して見えることで、支援の継続性と精度が上がる(不登校傾向、発達特性、家庭ストレスなど)。

– 安全・安心の確保 登下校や引き渡し、居場所の確保など生活面のリスクを減らす。

– 家庭負担の軽減 ワンストップで相談でき、支援調整の負担が軽くなる(特にヤングケアラーやひとり親世帯)。

– 地域資源の有効活用 学校だけでは届けにくい文化・スポーツ・福祉資源を接続できる。

連携を阻む主な課題(典型パターン)

– 組織の縦割り・所管の違い 学校(文部科学省)と学童・放課後等デイ(厚生労働省)で制度・基準・評価の軸が異なる。

予算やKPIも別々で「連携のインセンティブ」が弱い。

– 個人情報・同意の壁 個人情報保護(個人情報保護法や自治体条例)への不安から、必要な最小限の情報すら共有されない、あるいは手続きが煩雑で遅れる。

– 目的・言葉のズレ 教育の「学力」「指導」と福祉の「支援」「QOL」がかみ合わず、優先順位や達成指標の認識が異なる。

– 時間と人の不足 教職員は多忙、放課後側も人員配置に余力がない。

定例会やケース会議の時間が確保されない。

– 責任の所在不明 誰が全体調整を担うのか(担任、管理職、コーディネーター、事業所管理者)が曖昧で、滞留や「やった/言った」問題が起きる。

– 計画の二重化 学校の個別の教育支援計画・個別の指導計画と、福祉側の個別支援計画が別々に作られ、目標や支援が噛み合わない。

– 評価指標の不統一 双方が成果を測る物差し(出席・学業・行動・満足度等)を共有せず、連携の効果が見えない。

– 送迎・引き渡し・安全管理 誰がどこで引き渡すか、遅延・欠席時の連絡、医療的ケアやアレルギー対応など、運用ルールが整っていない。

– ICT・記録の非互換 学校の連絡手段と事業所の記録システムが別で、二重入力や伝達漏れ。

– 家庭との三者連携不足 保護者が情報ハブになって疲弊したり、片方にだけ期待・不満が偏る。

どう乗り越えるか(実務解)

– 共同ビジョンと役割分担の明文化
– 学校・学童(や放課後等デイ)・保護者で、年度初めに連携の目的・成果指標・役割(誰が何をいつまでに)を合意した覚書(MOU)を交わす。

– 校務分掌に「地域・放課後連携担当」を置き、外部側は「連携責任者」を指名。

小規模校や事業所は地区単位の合同連絡会を設ける。

– 情報共有の同意と最小限主義
– 共有目的を限定した同意書を用意(例 学習・行動・配慮事項・医療情報のうち、当該目的に必要な最小限)。

保護者に同意撤回と開示手続きを明示。

– 個票は「ワンシート(A4一枚)」で要点(強み、目標、配慮、連絡先、緊急時対応)を統一フォーマット化し重複を削減。

– 計画の整合とケース会議
– 学校の個別の教育支援計画/個別の指導計画と、福祉側の個別支援計画の「目標階層」を合わせる(長期目標は共通、短期目標は場面別)。

– 学期ごとに15~30分のミニケース会議(担任、コーディネーター、事業所担当、保護者)を定例化。

出欠基準・緊急連絡・課題エスカレーションを確認。

– 連絡・記録のシンプル化
– 日々の伝達は一本化(学校→放課後は連絡帳アプリか共有フォーム、放課後→学校は日報要約を週1で)。

重要案件は電話+記録。

– 監査が必要な児童福祉の記録は内部で保持しつつ、共有は要約にする。

改ざん防止のタイムスタンプを活用。

– 時間の確保と小さな仕組み化
– 週1回の5分オンライン定例(朝か昼)を設定し、連絡の渋滞を解消。

校内は管理職がこの時間帯を免責時間として担保。

– 年度初のオリエンテーションで引き渡し動線、避難・不審者対応、医療的ケアの手順を合同訓練。

– 送迎・安全の標準手順
– 引き渡しチェックリスト(人数点呼、アレルギーカード、服薬確認、連絡先)と遅刻・欠席時の連絡フロー図を掲示。

– バス運行がある場合は座席表・乗降時写真・ヒヤリハット記録をPDCA化。

– 文化の違いを越える「共通言語」
– ICF(国際生活機能分類)の枠組みやABC(行動分析)のような双方が使える観点を導入し、主観的表現を具体化。

– 会議は事実→解釈→仮説→試行の順で合意形成。

責めない・時間厳守・次回までのタスクを明確化。

– 研修と人材のハブ機能
– 年1~2回の相互乗り入れ研修(発達特性、虐待対応、合理的配慮、学習支援法、医療的ケア等)。

ロールプレイ中心で短時間でも実効性を高める。

– スクールソーシャルワーカーや地域学校協働活動推進員を「連携のハブ」に据え、ケースの優先度調整と資源紹介を担う。

– 評価・見える化
– 共通KPIを少数に絞る(例 出席日数、課題提出率、情緒安定の自己申告、保護者満足)。

四半期でモニタリングし、成果を互いにフィードバック。

– 成果事例は学年通信や学校だよりで共有し、連携の社会的価値を示す(次年度の理解と予算確保に直結)。

– 予算・制度の活用
– 放課後子ども総合プラン(放課後児童クラブと放課後子ども教室の一体的実施)の枠組み活用。

施設共用や人材の兼務で効率化。

– 地域学校協働本部の配置経費、外部人材(学習支援員、部活動地域移行の指導者)を、連携の中核に充てる。

実装の短期ロードマップ(例 90日)

– 0~30日 関係者マッピング、連携目的とKPIの合意、同意書・ワンシートの雛形作成、週1・5分定例の設定。

– 31~60日 個別計画の整合、初回ミニケース会議、引き渡し動線の合同訓練、ICT連絡ツールの試行。

– 61~90日 KPI初期値の確認、改善サイクルの着手、成功事例の共有。

必要に応じMOU改定。

連携の効果事例(イメージ)

– 課題 宿題未提出と授業中の離席が多い児童。

学校と放課後等デイで目標がズレ、家庭も負担増。

– 介入 目標を「15分の着席維持」と「宿題の分割提出」に統一。

放課後はタイマーと強化子、学校は席配置と視覚的手がかりを共通化。

週1で要約共有。

– 結果 4週間で未提出が半減、離席頻度が授業1回につき2回→0~1回に改善。

本人の自己効力感も上がり、保護者の負担感が低下。

根拠(国内外のエビデンスと制度)

– メタ分析(海外) Durlak, Weissberg, & Pachan (2010, American Journal of Community Psychology) は、明確な目標と段階的学習(SAFE原則)を満たす放課後プログラムが学業・社会情動面で有意な改善をもたらすと報告。

これは「学校での学び」と「放課後の練習・一般化」を設計的に結ぶことの有効性を示唆。

– コミュニティスクールの効果 RAND Corporation によるニューヨーク市コミュニティスクールの評価(2020頃の報告)では、出席・進級・進学等で改善が見られ、学校と地域・福祉の統合的支援の有効性が示された。

日本でも地域学校協働活動と親和性が高い。

– 日本の制度的根拠 
– 放課後児童クラブ運営指針(厚生労働省)は、学校・保護者との連携や情報共有、地域との協働を明記。

指針の改訂でも安全管理・質保証の観点から学校との連絡体制整備が強調されている。

– 放課後等デイサービス自己評価ガイドライン(厚生労働省)は、個別支援計画の質と学校等との連携を評価項目に含め、連携が質の要件であることを示している。

– 文部科学省の「チームとしての学校」(中央教育審議会の提言)や「地域学校協働活動の推進」関連資料では、学校が単独で抱え込まず、福祉・医療・地域と役割分担するガバナンスが提唱されている。

– 放課後子ども総合プラン(内閣府・文科省・厚労省、2014策定・以後拡充)は、放課後児童クラブと放課後子ども教室の一体的実施・施設共有・人材交流を制度的に後押ししている。

– GIGAスクール構想(文科省)は、学びと連絡のデジタル基盤整備を進め、適切な同意と運用下での情報連携を可能にする環境整備を促進している。

– 実務知見 スクールソーシャルワーカー配置拡充の自治体報告や地域学校協働本部の事例集では、コーディネーター配置と定例会・ケース会議の制度化が不登校支援や虐待予防、学習支援の成果に結びつくことが多数報告されている(自治体・文科省事例集等)。

成功の勘所(失敗を避けるコツ)

– 量より質 会議や共有書類を増やすのではなく、短く頻度高く、要点に絞る。

– 計画の「共通頂点」を作る 長期目標だけは完全一致させ、方法は場面に応じて最適化。

これで現場の裁量と一貫性を両立。

– 当事者である子どもの声 チェックイン(気分・困り感)を放課後でも学校でも共通の簡易スケールで取り、支援を本人参加型に。

– 早めに小さな成功を共有 連携のモチベーションは成功体験で高まる。

数週間で起こせる改善を設計する。

まとめ

– 連携を阻む主因は、制度の縦割り、情報共有の不安、目的と言葉のズレ、時間と責任の曖昧さに集約されます。

– 乗り越える鍵は、(1)共同ビジョンと役割の明文化、(2)同意に基づく最小限の情報共有、(3)個別計画の整合と定期的な短時間ケース会議、(4)安全・送迎・連絡の標準手順、(5)コーディネーターのハブ機能、(6)少数の共通KPIによる見える化、の6点です。

– 国内外の研究と日本の制度は、「質の高い連携」が学業、行動、出席、安全、保護者満足の改善に資することを支持しています。

まずは小さく始め、合意・記録・評価を回すことが効果への最短距離です。

必要であれば、貴校・事業所の条件(規模、対象、既存のツール)に合わせたMOU雛形やワンシート様式、週1・5分定例のアジェンダ例も提供できます。

成果を可視化し継続的に改善するための指標と実践は何か?

ご質問の「学校生活と放課後支援の連携における成果を可視化し、継続的に改善するための指標と実践」について、具体的なKPI設計の考え方、測定方法、日々の運用、改善サイクル、根拠となるエビデンスまで体系的に整理します。

まずの考え方(ロジックモデルとSMART目標)

– ロジックモデルで発想する
– 入力(人員・時間・訓練・資料)
– 活動(学習支援、ソーシャルスキルトレーニング、面談、家庭連絡、CICOなど)
– 産出(参加回数、面談時間、宿題支援回数、家庭との連絡頻度)
– 成果(短期 課題提出率向上、欠席減、困り感の自己申告改善/中期 行動問題の減少、授業参加度上昇、保護者の負担軽減/長期 進学・定着、自立スキル、QOL向上)
– SMARTな個別目標
– Specific・Measurable・Achievable・Relevant・Time-boundで、学校側の「個別の指導計画・教育支援計画」と、福祉側の「個別支援計画」を一致させる(目標文は同じ文言で共有)。

– 例 「3か月で課題提出率を60%から85%へ」「CICOの自己評価スコアを平均2.0から3.5へ」「遅刻を週3回から週1回以下へ」

成果を可視化する主要指標(先行=プロセス、遅行=アウトカムの両方)

– 学習・学校参加
– 出席率、遅刻・早退回数、保健室・別室登校の回数
– 課題提出率、宿題完了率、授業内の課題達成(簡便ルーブリック)
– 学習行動(開始までの時間、オフタスクの回数)を5〜10分のサンプリングで記録
– 行動・生徒指導関連
– 指導件数、記録上の問題行動の頻度と強度(例 中断・離席・言語的攻撃など)
– ポジティブ行動の頻度(PBIS的ポイント、トークン、ほめの回数)
– 社会情動(SEL)・適応
– 自己申告と教員・保護者評価 SDQ(Strengths and Difficulties Questionnaire日本版)、学校適応感尺度、学級所属感、レジリエンス簡易尺度
– CICOの自己評価(1〜5)や、気分のサーモメーター(朝・放課後)
– 生活スキル・自立活動
– 時間管理、持ち物準備、移行(切り替え)の自立度(段階式ルーブリック)
– コミュニケーション・自己 advocacy(助けを求める・断る・説明する)の頻度
– QOL・ウェルビーイング
– KIDSCREEN、PedsQL、WHO-5などの短縮版(年2〜3回)
– 「学校が楽しい」「安心できる大人がいる」などの主観項目
– 保護者・家庭
– 家庭の負担感(0〜10のVAS)、家庭-学校-事業所の連絡満足度
– 家庭学習の摩擦(喧嘩頻度)や支援に要する時間
– 連携プロセス(先行指標)
– 連携会議の開催頻度・出席率・議事録共有の速度
– 共有シート(サマリー/支援計画)の更新頻度と閲覧率
– 情報同意取得率、支援目標の整合率、介入忠実度(fidelity)
– 公平性・アクセス
– 性別・障害特性・家庭背景ごとの到達度格差
– サービス利用率、待機・中断の有無、送迎の安定性
– 安全・リスク
– ヒヤリハット・重大事案件数、保健・医療連携の対応時間
– 成果の持続と移行
– 長期欠席からの復帰維持率、学年移行・進学時の切れ目なさ(引継ぎ完了率)
– 放課後等デイの卒業後の定着(部活動・地域活動就労準備)

測定の具体的方法・ツール

– 既存の標準化尺度を年2〜3回(四半期または学期ごと)
– SDQ日本版 教員版/保護者版/自己版を組み合わせると360度評価が可能
– KIDSCREEN-10/27、PedsQL 主観的QOLのトレンド把握
– Vineland-3や適応行動尺度(必要な児童のみ年1回)
– 日常データの軽量取得
– 5分観察(オンタスク比率、支援提示の回数、トークン獲得数)
– 宿題・課題の提出ログは教務システムや簡易表で自動/半自動集計
– 連絡帳・ホームスクールノートのテンプレート化(目標に直結した3〜5項目)
– 介入の忠実度(fidelity)チェック
– PBIS Tier1/2実装チェック(簡易版TFI等のチェックリスト)
– ソーシャルスキルトレーニング(SST)やCICOの実施手順遵守率
– 放課後等デイサービスの自己評価
– 厚労省所定の「自己評価表」+独自の連携項目(学校との共有件数、目標整合)

データを改善につなげる運用(PDCA/PDSA)

– Plan
– 共同アセスメント会議 学校(担任・コーディネーター・SSW)+事業所(管理者・児発管)+保護者+本人
– 3か月のSMART目標と測定計画、責任分担、合意した情報共有方法(同意書)
– Do
– 具体的介入 CICO、UDLに基づく教材調整、SST、家庭の宿題ルーティン支援
– 週次の短時間「ハドル」(15分)で小さな修正(PDSAの小回り)
– Check
– 月次ダッシュボード確認(RAG=赤黄緑)とケースごとの「なぜ」を対話
– 本人・保護者の声を反映(数値とナラティブの両輪)
– Act
– 成功パターンの標準化(作成した支援カード・手順書を共有)
– うまくいかない場合は仮説を変え、介入強度や種類を調整(Tier2→Tier3へ)

実践の具体例

– チェックイン・チェックアウト(CICO)
– 朝の目標設定(3項目、各5点満点)→授業ごとの自己・教員評価→放課後の振り返り
– 指標 平均スコア、ばらつき、自己評価と教員評価の乖離、達成日数
– 宿題・課題支援ハイブリッド
– 学校での課題を放デイで着手→家庭で仕上げ→学校で提出までのスルーライン
– 指標 提出率、未了課題の滞留日数、家庭の摩擦スコア
– 行動の代替スキル化(SST+環境調整)
– 例 離席の代替として「ヘルプカード」「3分ブレイク」導入
– 指標 離席回数、ブレイク使用回数と回復時間、授業復帰率
– 連絡・記録の統一フォーマット
– 1ページサマリー(診断名ではなくニーズ・強み・有効支援・NG対応)
– 連絡帳は「観察(O)」「介入(I)」「反応(R)」「次の一手(N)」の4欄

データ共有・倫理・ガバナンス

– 同意と最小限共有
– 目的、範囲、保管期間を明示した同意書。

必要最小限の項目のみ共有。

– 個人情報保護とアクセス管理
– 学校と事業所で閲覧権限を分ける。

送受信は暗号化、紙は施錠保管。

– 子どもの権利・本人参加
– 本人の合意形成年齢に応じた説明と自己決定支援。

本人の目標文をダッシュボードに反映。

– 指標の副作用対策
– 数値目標の過度なプレッシャーを避け、努力指標(例 挑戦回数)も評価。

– 行動削減だけでなく代替スキルとポジティブ指標の比率を意識(少なくとも11以上、理想は31)。

小規模から始める導入ステップ(90日版)

– 0〜2週 対象5〜10名を選定、同意取得、ベースライン測定、共通テンプレ作成
– 3〜4週 CICOと宿題支援を開始、週次ハドル運用
– 5〜8週 月次レビュー1回目、介入の微調整、成功事例を横展開
– 9〜12週 レビュー2回目、次学期の目標・KPI再設定、簡易実装ガイド作成

成果ダッシュボードの例(項目イメージ)

– 学校参加 出席率、遅刻回数(週次)、保健室利用
– 学習 課題提出率、オンタスク%、支援提示回数
– 行動 問題行動の頻度、ポジティブ行動ポイント比
– SEL/QOL SDQ合計・情緒下位尺度、KIDSCREENスコア
– 家庭 負担感VAS、連絡満足度
– 連携 会議開催、計画更新、fidelity
– RAG判定とコメント欄、次のアクション1行で記載

根拠・エビデンスの概要

– 放課後プログラムの効果
– 海外のメタ分析(例 Durlakら)では、質の高いアフタースクール・プログラムは学業、社会情動スキル、行動の改善に有意な効果が示されている。

特に明確な目標、積極的学習(active learning)、一貫した構造(SAFE原則)があるプログラムで効果が高いとされる。

– 学校と福祉の協働
– わが国では、文部科学省が「チームとしての学校」「生徒指導提要(改訂版)」等で多職種連携とデータに基づく支援を推進。

個別の教育支援計画と福祉側の個別支援計画の一体的運用が繰り返し示されている。

– 厚生労働省「児童発達支援・放課後等デイサービスのガイドライン(令和以降の改訂)」では、アセスメント→計画→モニタリング→評価のサイクルと、自己評価結果の公表、家族支援の重要性が明記。

これ自体がPDCAを前提にした枠組み。

– 行動支援の枠組み(PBIS/MTSS)
– 学校全体でのポジティブ行動支援(PBIS)は、行動問題・懲戒の減少、出席の改善、学校風土の改善に関するエビデンスが国際的に蓄積。

日本でもPBIS実践校の報告で指導件数の減や風土改善が紹介されており、指標設計(Tier別、先行/遅行)との親和性が高い。

– 標準化尺度の妥当性
– SDQ日本語版、KIDSCREEN日本語版は信頼性・妥当性の検証報告があり、学期単位の変化検出に適する。

QOLや主観的適応は「本人の声」を数値化する重要な手段。

– 改善手法
– 教育現場のPDSA/PDCA、学習到達度の可視化、UDL(ユニバーサルデザインの学び)に基づく調整は、エビデンスに基づく介入(EBP)群に含まれ、個別最適化の効果が示されている。

失敗を避けるコツ

– 指標は絞る(最大でも中核5〜7項目+補助指標)。

現場の記録負担を最小限に。

– 介入忠実度を見ずに「効果がない」と判断しない。

まず実施の質を点検。

– 数値だけで判断せず、本人・保護者のナラティブ(出来事・感情)を必ずセットに。

– 連携会議を「報告会」にしない。

仮説検証の場にする(小さく試して、早く学ぶ)。

まとめ
– 成果の可視化は、学習・行動・SEL・QOL・家庭・連携プロセスのバランスを取り、先行指標(実施やプロセス)と遅行指標(アウトカム)を両立させることが鍵です。

– 測定は標準化尺度+日常の軽量データ+本人・保護者の声で三点測量。

– 運用はSMART目標とPDCA/PDSA、週次ハドルと月次レビュー、ダッシュボードで透明化。

– 根拠として、放課後プログラムのメタ分析、PBIS/MTSS、文科省・厚労省ガイドライン、標準化尺度の妥当性が支えになります。

これらを、まず少人数・短期間で試行し、うまくいった型を校内・事業所内で標準化するのが成功の近道です。

必要であれば、貴校・貴事業所の実情(学年、人数、課題)に合わせたKPIセットとテンプレートのひな型をご提案します。

【要約】
学校と放課後支援の連携は、不登校増や共働き拡大、特別支援ニーズ、非認知能力重視、ポストコロナ回復、地域移行などを背景に重要性が高い。学習の定着・探究促進、早期発見、インクルーシブ実現、居場所と関係資本の拡充、生活リズム改善に効果。国の制度・統計も連携強化を後押し。学童や放課後等デイ、地域子ども教室、部活動の地域移行と結び、端末・計画の共有、合理的配慮の継続、虐待・貧困等リスクの早期対応、教員負担の適正化にも寄与。

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